着物がビジネスシーンで輝く!
「貴-ate-」が創り出す新しい価値

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大阪府

着物(呉服)小売業界の市場規模は、1970年代から1980年代のピーク時の約1.8兆円と比較すると、約6分の1にまで縮小した。この背景には、着物の着用機会の減少、若年層の離れ、高価格イメージなどの要因がある。しかし、近年着物を洋服や小物にリメイクするアップセルサービスが注目されるようになり、日本の伝統文化の継承が期待されている。

このような状況の中、スーツ事業に関わる別の企業に属していた石川 魁我さんと中井 梨乃さんが「着物の価値が下がっている現状を変えたい」と意気投合し、2024年にブランド「貴-a te-」を立ち上げた。

この記事では、創業者の2人に 貴-a te- を立ち上げたきっかけや製品開発へのこだわりなどを伺った。

PROTAGONIST

石川 魁我・中井 梨乃共同代表

スーツ業界のプロ2人がタッグを組んで始めたブランド「貴-a te-」

今の生活スタイルは昔とは大きく変わり、伝統的な日本文化が衰退しつつあると感じている業界の方も多いのではないだろうか。貴-a te- は「着物が現代のライフスタイルを創り出す」をコンセプトとするブランドだ。

「日本の伝統の中には、時代に合わなくなったものや使い方がわからなくなったものがたくさんあります。貴-a te- では、その中の一つである着物を現代のライフスタイルに合わせて形を変え、新しい価値を持たせて世に送り出しています」(石川さん)

現在、貴-a te- では着物をリメイクしてネクタイやチーフを制作している。石川さんと中井さんは、もともとスーツ業界で働いていたプロであるため、ビジネスファッションに対するセンスも抜群だ。

ブランド名「貴-a te-」はイタリア語で「あなたへ」という意味を持っている。漢字の「貴」は貴族の「貴」からとったものだ。この「貴」という漢字は昔の読み方で「あて」とも読まれ、高価なものや尊敬するという意味がある。着物は「着る物」と書くが、「貴重なもの」としての「貴」の文字を選んだ。このブランドを通じて着物の価値を再び高めていきたいと考えて名付けたのだとか。

やりたいと思ったらやる!きっかけはイタリアから

石川さんがイタリアに住んでいたとき、日本を好きな外国人が多く、「日本は本当に愛されている国なんだな」と感じたそうだ。しかし、日本に来た外国人はわざわざ日本でオーダースーツを作る必要がなく、オーダースーツに触れる機会がない。そうした外国人に、日本の商品を間接的にでも届けたいという思いが、このビジネスを始めるきっかけとなったという。

着物は基本的に女性が着ることが多いため、男性目線だけだと偏りが出ると考え、当時、スーツ業界で活躍していた中井さんに協力を依頼し、共同代表としてブランドを進めることになったそうだ。

「僕は『やりたいと思ったらやる』という性格で、すぐにブランドを立ち上げるには何が必要かを考え、逆算しながら準備を進めました。日本国内で着物の価値が下がっている一方で、海外では逆に高く評価されているんです。このギャップにビジネスチャンスがあると考えました。この事業を進めることで、世界のビジネスシーンで着物が活躍する時代を作りたいと思ったんです」(石川さん)

ネクタイやチーフは使いやすいアイテムなので、成功する自信があった。また、共同代表である2人がスーツ業界出身だったからこそ、一歩を踏み出しやすかったそうだ。

「これまでのお客さんたちが応援してくれていることが、ビジネスを成功させる大きな根拠となっている。だからこそ、僕らも本気で取り組めるんです」(石川さん)

チーフの角の美しさに半年以上をかけて

ブランド立ち上げの準備は約1年をかけて進めてきた。2023年6月頃から着物を集め始め、2024年1月にリリースを予定していたが、商品や紙袋の質、価格設定などに納得がいかず、最終的にリリースは6月に延期となった。

「特にこだわったのが、チーフの角の美しさです。これを完璧に製造できる工場を見つけるのに本当に時間がかかりました。最終的には、トヨタの椅子やタグを作っている石川県の企業に決めました。この会社は、僕たちからの細かい要望に応えるために、オリジナルミシンまで購入してくれたんです。それから、半年以上の改良を重ねてやっと納得できるチーフが完成しました」(石川さん)

着物を美しくリメイクするためには生地の質や縫製が重要だ。石川さんと中井さんはスーツ業界で長く生地に触れてきた経験があるからこそ、その品質を見極める自信があるという。確かにモノの質がわからなければ、高品質なリメイク品を提供できないことは言うまでもない。普通のネクタイが5,000円だとしても、質の高い生地でメイドインジャパンだとすれば25,000円と単価は跳ね上がるという。スーツ業界で培ったネットワークと経験を活かし、商品価値を高めるルートも持っていることが 貴-a te- の強みだ。

商品の箱にも細部までこだわった。大きさや色合い、光の入り方などを調整し、最終的にネイビーグレーの色合いと和紙を思わせるマットな質感の紙を選び、高級感のある仕上がりにした。持ち運びやすさにもこだわり、薄さを意識して作っているそう。

「黒字に金は海外ではあまり評価されない、茶色にするとチョコレート菓子のような箱に見えるなど、何度も作っては廃棄の繰り返しでした。すべてオーダーメイドにし、家でインテリアとしても映える高級感のあるデザインになりました。紙袋も丈夫で雨に強いものにしたので、捨てずに飾ったり持ち歩いたりして長く使ってもらえるとうれしいですね」(中井さん)

この仕事を始めてから、石川さんも中井さんも日本の伝統や工芸に関わる人たちと会う機会が増えたそうだ。着物業界には老舗企業も多い。そのため、伝統である着物をリメイクすることに反感を持たれることもあるのかと思いきや、そのようなことはないようだ。業界全体で着物の価値が下がっている現状を憂う中、同じ志を持つ人々からは「おもしろい取り組みだ」と褒めてもらえることも多いそう。日本の伝統を守りながら、新しい価値を創造していきたいという気持ちは皆同じなのかもしれない。

着物のリメイク製品を通じて世界中に日本の伝統を届けたい

「着物を提供してくださる方々には、それぞれの着物に対する強い思いがあります。その大切な思いに価値がつかないのは悲しいですよね。僕たちはその着物の形を変えて新たな価値を生み出せます。着物がリメイクされて商品になると、持ち主さんは本当に喜んでいただけるですよ。これが僕たちの作り出せる価値なのかな、と思います」(石川さん)

今後は日本の企業と連携して着物を使った商品開発やグッズ製作などに幅を広げていきたいという。空港のお土産コーナーや、京都のホテルで館内着や制服として使われるような商品を検討しているそうだ。メインターゲットはインバウンド層だが、日本の伝統文化に興味がある日本人にも届けたいという思いもある。

「例えば、海外のビジネスシーンで貴-a te-のネクタイを身につけていて『このネクタイ、おしゃれですね』と言われ『これは着物で作っているんですよ。私は日本が好きで…』とか『日本に行った友達が買ってきてくれたんですよ』といった会話が生まれることもきっとあると思うんです。自分たちの商品を通じて、世界中のどこかで日本の話が広がることもあるかもしれません。それが、僕たちが日本に貢献できる形の一つなのかなと思っています」(石川さん)

貴-a te- は、リメイクを通じて着物の価値を高め、新たな形で日本の伝統文化を現代に息づかせている。創業者の石川さんと中井さんは、スーツ業界での豊富な経験を活かし、ビジネスファッションと日本の伝統を融合させた製品を生み出し続けている。

着物のリメイクは、単なるデザインの変化ではなく、着物に込められた思いや歴史を新たな形で未来につなぐ取り組みとも言える。「貴-a te-」が成長していくことで、日本の伝統文化が世界中で愛され続ける可能性が高まる。「貴-a te-」の今後の活躍が楽しみだ。

INFORMATION

アスライフ&パートナーズ株式会社 繊維事業部

ブランド名には、私たちの想いが込められています。

貴という漢字は「貴重、高貴」に使われるように
『大切である』『尊敬する』などの意味があります。

伝統文化に敬意を称し、着物に新しい価値を創り出すことで
後世に受け継いでいきたいという想いからこのブランドを始めました。

着物が“貴物”になる様、想いを込めて名付けました。

創立
2018/11/1
従業員数
-
ホームページ
https://ate-japan.com/
Writer:
GOOD JOB STORY 編集部

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