“好き”を残して“面倒”を捨てた。自由をまとう新しい着物で未来をつくる
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大阪府
古来より、日本の美意識を象徴してきた着物。その優雅なシルエットと繊細な意匠は、世界中の人々を魅了してきた。しかし近年では、着物は特別な儀式や催しでのみ着用されるものとなり、「着物離れ」が進んでいる現状だ。
CommonStyle(コモンスタイル)株式会社が行った「着物離れ」に関する調査(日本人20代~40代男女対象)によれば、若い世代ほど普段着として着物を着る割合が低く、20代の約51.9%が特別なセレモニー以外では着物を着ないと回答している。その理由として「着付けの仕方が分からない(50.1%)」が最も多く、次いで「着付けに時間がかかる(37.3%)」「身体を動かしにくい・歩きにくい(33.5%)」が続く。この現状は、伝統ある着物業界にとって、早急に取り組むべき課題だろう。
その現状を踏まえ、「もっと気軽に、簡単に和服の魅力を感じてほしい」という思いから同社は「ハイブリッド着物 SOURA」を誕生させた。本記事では、代表取締役の今井三壮氏にSOURAへの思いや今後の展望などを伺った。

PROTAGONIST
今井三壮代表取締役
わずか1分で着付けが完了する新しい着物

今井氏は20年間、着物業界に携わってきた。2社を経験しているが、いずれも着物業界で小売・企画・販売といった業務は一貫していたという。以前勤務していた会社では、着付け教室の企画・運営を通じて着物を販売する流れをつくり、商品開発や広告、IT、販売企画まで幅広く手がけていた。
しかし、コロナ禍で教室の運営が困難になったため、会社を閉鎖することに。「これで終わらせるのは、もったいない」と感じた今井氏は、旧同僚たちとともにCommonStyle株式会社を立ち上げた。創業当初は、旧会社から引き継いだ顧客向けに通常の着物販売を行いながら事業を継続。ポップアップ販売などで“なんとか生き延びていたが、従来のやり方での経営に限界を感じていた。
教室運営の中で「準備や片付けの煩雑さ」こそが着物を着用するための大きなハードルではないか、と感じていたという。そこで、「もっと気軽に和服の魅力を感じてほしい」という思いから、ファスナーと帯ベルトでわずか1分で着付けが完了する着物を考えた。
「着物を着るには、まず下着をつけて、長襦袢(ながじゅばん)、着物、そして帯と、順に身につけていきます。実は、この着付け自体は、そんなに難しいとは思っていません。でも、それ以前の準備と着た後の片付けが本当にしんどい。ここが一番大変で、正直かなり面倒なところです」
SOURA は洗濯もできて片付けも簡単だ。着付けの専門家によって設計された本格仕様で、縫製はすべて日本で行う。素材には主に、動きやすく快適なストレッチ素材を使用している
なぜ帯を結ぶのか知っていますか?
会社名「CommonStyle」とブランド名「SOURA」には、今井氏の想いが込められている。
「Commonは一般という意味ですよね。着物は特別なものではなく、普段のファッションとして楽しんでほしいと思ってこの社名にしました。一方、 「SOURA」は“そーら、簡単やろ”っていう、関西弁の掛け声的なニュアンスから生まれました」
着物はパーティーのような特別の時に着るものだけではなく、「普通」のものであるというイメージを伝えたかったという今井氏。しかし、普通と言いながら、実は普通じゃないものを作りたかったという矛盾も語っている。SOURA は、単に伝統的な着物を簡略化しただけの製品ではなく、ハイブリッドきものという「新ジャンル」という位置付けだ。
「使う素材や形が違うだけで、やることは変わらないんですよ。でも、結局“自分が嫌だと思うこと”は全部排除したんです。“着物っぽい雰囲気”は残したい。みんなそこは求めてるから、このハイブリッドを作りました」
「伝統だから」「そういう決まりだから」でも、それが“なぜそうなっているのか”を本当に理解している人は、実はほとんどいない。
「なぜ帯を結ぶのか、なぜ長いのか知ってますか?お太鼓の意味や一重太鼓と二重太鼓の違いなんてほとんどの人は知らないですよね。そんな誰も知らないものを、ただ守るためだけに毎回頑張るはないと思うんです。それより、着ることを楽しむこと。そこが一番大事やと思っています」
誰も知らないものを守り続けるより、もっと自由に楽しんでいいんじゃないかと考えた。SOURA は着物の歴史を途切れさせないために、従来の形をあえて壊し、あえて再構築したものだ。
着物の可能性を感じた販売戦略
2021年に行ったクラウドファンディングでは、開始から1ヶ月で約700万円の売上を達成。今井氏は当時を振り返り、以下のように語る。
「クラウドファンディングの結果により、市場にニーズがあると確信しました。その後も、大阪、神戸、京都、名古屋、埼玉、東京、神奈川、愛媛など、全国8かで開催されたポップアップショップは好評でした。インスタグラムで SOURA を知り、わざわざ四国から買いに来られた方もいらっしゃいましたね。すごく気に入っていただき、地元でラジオ出演に招かれました」
さらに、「ミスユニバース大阪大会」のオープニングランウェイや、「関西ダンディーコレクション」「大阪インターナショナルコレクション2023」といったファッションショーにも採用され、単なる「簡単な着物」ではなく、ファッションアイテムとしての存在感も高めている。国内でのブランド認知は着実に広がっているといえるだろう。
また、今井氏は、グローバル展開を視野に入れ、ニューヨークファッションウィーク(NYFW)への参加を目指している。
「2023年に初めてミラノコレクションに参加したときに世界とも戦えると思いました。海外でも着物は“すばらしい”とは言われますが、実際に着る人は少ない。例えば、日本人がベトナムに行ってアオザイを着ても、帰国後に着続ける人はほとんどいませんよね。これが現実です。それでも、ミラノコレクションで着物を着て堂々と歩く外国人モデルを見た時にかっこいいと感じました。自分がかっこいいって思ったのだから、同じように共感してくれる人は世界中にいるはずです」
海外展開においては、従来の日本の着物のイメージに固執せず、グローバルなファッションとして受け入れられる新しい価値を創造したいとしている。また国内では実店舗の展開も視野に入れ、より多くの人々に SOURA を届けたいと語った。
買ってもらえない“伝統”に未来をつくる
従来のやり方では限界があるという危機感。それが SOURA という新しい和装を生んだ。今井氏は、従来の着物を高級品として海外に打ち出す流れにも疑問を持っている。
「今までも“高級な従来の着物”を海外に訴求しようとしてきた流れはありますが、それが爆発的に売れているかといえば、そうではないと思うんです。広めるって結局、“買ってもらう”ことですよね。でも、従来の着方で、しかも高級品で、誰が買うのか?って正直思ってます。だから、そこは変えないといけない」
さらに、海外展開の前提として「まず日本で“今の感覚”に合ったものが広がることが大切だ」と強調する。
「いきなり“古き良き日本”を押し出しても、それだけでは届かない。新しく進化しているからこそ、意味があると思ってます。完全に僕の持論なんですけどね」
そのための一手が、ハイブリッド着物 SOURA の海外進出だ。今井氏は、着物業界にイノベーションを起こそうとしている。
ハイブリッド着物 SOURA は、日本の美しい伝統文化を継承しながら、現代のライフスタイルや価値観に合わせて再構築された革新的な製品である。着付け不要の手軽さ、快適な着心地、そして洗練されたデザインは、「着物離れ」が進む今の時代に、新しい和装の可能性が期待できる。国内市場での実績と、グローバル展開への意欲を併せ持つCommonStyleと SOURA は、日本の伝統を革新という形で再発信し、新たなファッションの潮流を世界に生み出す存在となり得るだろう。
INFORMATION

CommonStyle株式会社
ファスナーと帯ベルトで1分着脱、新たな着物の形”ハイブリッド着物”。
美しいシルエットを保ちつつ、ファスナーで簡単に着脱できる着付け不要のハイブリッド着物は、着物着付けの専門家によってデザインされました。
ハイブリッド着物は、なんと言っても”着やすさ”と”着心地”。着物なのに、着付け不要で、洗濯できる着物。すべて日本製で、製法ももちろんしっかりしています。その動きやすさは走っても着崩れしにくく、おしゃれな着姿を楽しめます。
- 創立
- 2020
- ホームページ
- https://commonstyle.net/
- Writer:
- GOOD JOB STORY 編集部