徹底した顧客ニーズ対応の秘訣とは?花嫁の夢を形にするウェディングデザイナー
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大阪府
結婚式は奈良時代から始まったと言われている。しかし、現在の結婚式場でのスタイルは歴史が浅く、20世紀初頭から成長してきた日本特有の産業形態だ。しかし、日本の人口は近年減少傾向にあり、推計では2070年には総人口が9,000万人を下回り、高齢化率は39%に達すると見込まれている。さらに、未婚率の増加やナシ婚の増加により、婚姻数は減少する一方だ。顧客となりえる母数が減少するため、ウェディング業界の今後は厳しい状況だとも言われている。
nicora decora は、オーダーメイドのウェディングドレスとカクテルドレスの製作を主軸にレンタル、フォトウェディングなどの事業を展開しているブランドだ。特に、仕掛けのあるドレスやカジュアルウェディングに対応した一風変わったドレスなどが好評を博している。オーナーデザイナーである清瀬摩美さんは、一人親方として nicora decora ブランドを切り盛りしてきた。細部にまでこだわったドレス作りを通じて、多くの花嫁の夢を形にしている。
本記事では、nicora decora オーナーデザイナー清瀬さんに、ウェディングドレス製作への思いをお伺いしました。
PROTAGONIST
清瀬 摩美オーナーデザイナー
姉の結婚を機にウェディングデザイナーへの道を決意
清瀬さんがウェディングドレスデザイナーとしての道を歩み始めたのは、短大時代に遡る。当初は、普通のデザイナーを目指していた清瀬さん。しかし、ある展示会でウェディングドレスに出会い、その美しさに心を奪われたのだとか。それがきっかけで、ウェディングドレスのデザイナーになることを決意し、短大卒業後には再度専門学校に進学。その学校では、デザインが優秀な学生2名だけがウェディングドレスを作ることが許される。清瀬さんは見事その2名に選ばれたのだそう。
「デザインの優秀者に選ばれたこと、ドレスを作る機会をもらえたことが本当に嬉しくて。それで、もうウェディングドレスしかないと思ったんです。その後、ちょうど姉が結婚することになり、姉のウェディングドレスを作りました。姉が喜んでくれる顔を見て、わたしはやはりこの道へ進みたいと思いました」(清瀬さん)
専門学校を卒業した後は、アトリエでアシスタントとして働きながら技術を磨いたそう。そこでの経験は「女子高の体育会系のような厳しさ」だったとか。しかし、その苦しい経験が今の清瀬さんの基盤を作った。その後、縫製工場、さらには皮専門の縫製工場へと、清瀬さんの学びへの欲はとどまることを知らない。プロとなった今でも、ビーズ刺繍やアクセサリーの教室に通い、日々技術の向上に努めている。
花嫁のニーズに徹底的に応えるこだわり
現在、清瀬さんが運営する nicora decora では、オーダーメイドのウェディングドレスとカクテルドレスの製作やドレスのレンタルを行っている。さらに、フォトグラファーやヘアメイクアーティストとのコラボレーションを通じたフォトウェディングのサービスも提供している。
「最近は結婚式の形態も多様化しています。お友達だけのパーティーやご家族と別々の式など、カジュアルなウェディングも増えているんですよ。ドレス姿の写真だけ欲しいという方も多いですね。そういった細かいニーズに対応したドレスやサービスを提供できることが nicora decora の強みです」(清瀬さん)
現在、オンラインでのドレス販売も視野に入れ、勉強しつつ挑戦しているところだそう。しかし、新しい分野への進出は簡単ではなく、試行錯誤の毎日だ。
ドレス製作は、まずお客様とのデザイン打ち合わせから始まる。その後、体型にぴったり合うよう採寸を行い、手書きでパターンを引く。その後、仮縫いの段階で細かな調整を行い、本番の生地を使って最終的に仕上げる。この製作期間はデザインによって異なるが、通常は1ヶ月ほどかかるそう。
「最近は、CADソフトを用いてパソコン上でパターン作成する方法が主流ですが、わたしは手書きでパターンを引くことにこだわっています。手書きの方が、体のラインにぴったりと沿う微妙な調整ができるんですよ」(清瀬さん)
清瀬さんの強みは、1着で何通りにも変化できるドレスの製作だ。例えば、TOBE(トップスやボトムスが入れ替えられる)ドレスや、早着替えのように見た目が変わるドレスなど、列席者を驚かせるようなデザインが得意なのだとか。他には類のないドレスを製作するために、技術の向上を常に意識しており、新しい技術を学ぶために今でも教室に通い続けている。
「何年経っても、わたしはまだまだ勉強中だと思っています。最新の技術を取り入れて、どこよりも良いデザインにしたいので、常に学び続けていたいんです」(清瀬さん)
お客様からのサプライズプレゼント
清瀬さんがこれまでに製作したドレスは、その一つひとつに思い出が詰まっている。中でも、あるお客様が製作風景から結婚式当日までの写真を1冊のアルバムにまとめ、清瀬さんにプレゼントしてくれたことが特に印象に残っているという。
「本当に驚きましたし、とにかく嬉しかったです。メッセージもたくさん入れてくださって、今でも大切にしています。わたしの宝物です」
リピーターの少ない業界であるにもかかわらず、清瀬さんのもとには、再依頼をしてくれるお客様が多いとか。ウェディングドレスだけでなく、赤ちゃんが生まれたときのベビードレスや家族の形見を使ったワンピースの製作、母親が着たドレスのリメイクなどさまざまなニーズがあるそうだ。
「節目節目のセレモニーで nicora decora を思い出していただけることが本当にありがたいです。わたしがベビードレスを製作したお子さんが成長されて、結婚式でウェディングドレスをオーダーされるなんてことがあったら、感動して泣いてしまうかも」(清瀬さん)
ウェディングドレスの製作は、決して簡単な仕事ではない。清瀬さんは「飽き性の人にはこの業界は向いていない」と語る。ドレスの製作中は、長時間にわたる単純作業になるため、目や腰に負担がかかり、体力も必要だ。実際に、清瀬さん自身も3日間寝ずに作業を続けた経験があるそう。そのときのことを「本当にしんどかった」と振り返る。
「製作は体力勝負ですよ。長時間の単純作業で同じ姿勢になるので、特に腰や目が悪い方には、この仕事は向いていないかもしれません。わたしも体力をつけるためにジムに通って体を動かしています。元気でいることは、一番大事だと思います」(清瀬さん)
見本のないドレスを作るため、うまく製作できず失敗することもある。しかし、清瀬さんは「できません」という言葉は決して使わない。どんな難しい依頼にもまずはやってみる。そして、試行錯誤しながら最終的には満足のいくドレスを仕上げてきた。その自信が、今の清瀬さんの強みになっているのだろう。
今後は、日本の伝統的な要素を取り入れたドレスを海外へ展開していきたいとしている。特に、金彩(きんだみ)という和のテイストを取り入れたドレスに期待しているのだとか。金彩とは、金箔や金粉を使って布に模様を描く技法で、古くから日本の伝統工芸として受け継がれてきたものだ。この技法を活かしたドレスには、日本独自の繊細な美しさが漂うため、海外でも高い評価を得る可能性がある。
「そもそもウェディングドレスの発祥はヨーロッパです。そのため、普通の日本製ウェディングドレスは、海外ではあまり重宝されない傾向にあります。それでも、金彩を使った和のテイストを取り入れたドレスなら、海外でも受け入れられるのではないかと。日本の伝統である金彩の美しい装飾を世界中の方に知っていただく機会になれば嬉しいです」(清瀬さん)
nicora decora は、すでに和装とのコラボレーションを進めている。清瀬さんの新たな挑戦が、今後どのように展開していくのか期待が高まる。
INFORMATION
nincora decora
オーナーデザイナーの清瀬 摩美が、一着一着、心を込めて、時間をかけて、世界に一着しかないウェディングドレスを製作しております。
nicora decoraのドレスは、こだわりの贅沢な生地を使い、花嫁さまのスタイルがより映えるよう、さまざまな工夫を凝らしております。
nicora decoraという名前は、ご新婦さまがもっとも美しく輝くのは、nico(にこにこ。笑顔) × decora(デコラティブな装い)このふたつがかけ合わさった時であり、nicora decoraのウェディングドレスを着ていただくことで、花嫁さまの魅力を最大限引き出せたら、という思いでつけました。
- 創立
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- 従業員数
- 1
- ホームページ
- https://nicoradecora.com/
- Writer:
- GOOD JOB STORY 編集部