ブランド名に刻む“反骨精神” 
路頭に迷った10代からハーレー界の頂点へ

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大阪府

大阪府大東市にある「REVOLT CUSTOM CYCLES(リボルトカスタムサイクルズ)」は、ハーレーダビッドソンの販売、修理、車検、製造などを行っている企業だ。店頭には世界で評価された技術と“あの頃”から積み上げてきた経験が詰まった一台一台が並んでいる。
「何をしていいのかわからない」
そんな宙ぶらりんな10代を過ごしていた一人の青年が、ハーレーダビッドソンと出会い、人生を大きく変えた。サッカーのプロへの夢が途切れた先で出会ったバイク。そして、過酷な修業の日々。友人との約束と叶わなかった最後のツーリング。そのすべての経験が代表である井上氏を支えているという。
この記事では、「REVOLT CUSTOM CYCLES(リボルトカスタムサイクルズ)」の代表 井上 正雄氏に、ハーレーダビッドソンとの出会いや事業立ち上げのきっかけ、今後の展望などを伺った。

PROTAGONIST

井上 正雄代表

「反骨」を宿したブランド名“リボルト”に込めた雑草魂

井上さんがハーレーダビッドソンに出会ったのは10代。そこから井上さんの人生は大きく動き始めたという。もともとはサッカー選手になりたかったが、プロへの道は厳しい。夢が破れ、何をしたいかさえわからない状態になったそうだ。

「サッカー漬けの毎日の中、地元のフェリー乗り場で大人たちがハーレーに乗って走って行くのを見たんです。さっそうと走るその姿に自由を感じ、そのカッコよさに目が離せませんでした。それがきっかけとなり、20代でローンを組んでハーレーを購入しました。その頃は、毎日のようにハーレーを触ったり乗ったりしていましたね。国内外のバイク雑誌もよく読んでいました。その中でカスタムビルダーという仕事に出会ったんです。これを見た瞬間にこれだ!と思いました」

当時カスタムビルダーという仕事は、海外ではメジャーだったものの、日本ではまだ知られていなかった。15年の修行の後、井上さんは「REVOLT CUSTOM CYCLES」を立ち上げる。その社名には、うまくいかなかった過去を糧にした彼の反骨精神が刻まれている。

「カスタムサイクルズ」は“バイクを改造する”という意味だ。そこに「リボルト(反骨)」を重ねた「REVOLT CUSTOM CYCLES」は、井上さんが小さな頃から幾度となく叩かれ、そのたびに這い上がってきた雑草魂を表現したもの。その反骨精神がブランド名に込められている。

井上さんはカスタムビルダーに憧れを抱きながらも、それをどう仕事にできるのかわからなかったという。一時はアメリカの専門学校も視野に入れていたそうだ。そんな中、20歳で宮城県のカスタムビルダーが手がけた「すごいバイク」に出会う。

「海外に行かずとも国内に本物がいるなら、アメリカに行く必要がないと思ったんです。その社長さんは威厳があり近寄りがたい迫力がありましたが、作っているバイクは繊細で優雅でかっこいい。本当に衝撃的でこのお店で働きたいと思いました。とはいえ、若く技術もないので、今のままでは雇ってもらえる気がしませんでした。遠回りになるかもしれないけれど、まずは自分の武器を身につけようと思ったんです」

ここから、井上さんの修行が始まる。

雪深い宮城で無言の現場が育んだ職人技

最初はメッキ屋で1年半修行したそうだ。次に溶接を身につけるため溶接屋へ面接に向かうが一度は断られた。しかし、たまたまその場に居合わせた別の社長がおもしろがって声をかけてくれたのだとか。朝から晩まで練習し、3年半で多様な溶接技術を身につけた。さらに機械加工も学びたいと、溶接屋に出入りしていた機械加工屋さんに頭を下げ、日中の仕事を終えてからも旋盤やフライス盤を学ぶという生活を半年以上続けた。

およそ5年、溶接と機械加工に自信がついた25歳。満を持して憧れの宮城の社長に手紙を送った。その1ヶ月後、2月の厳冬期にテントをバイクに積み、3日かけて宮城へ到着した。

「2月の厳冬期に大阪からハーレーに乗って走って来た私を迎え入れてくれ、思いを聞いて頂きました。熱意が伝わり社長の元で働く許可をもらえました。とにかくここで仕事がしたくて5年下積みをしてきた勢いしかなかったので、働けるとなり本当に飛び上がるほど嬉しかったですね。突然やってきたのに受け入れて頂き感謝しかありませんでした。」

とはいえ、仕事中に余計なおしゃべりは一切ない。そんな張り詰めた空気の漂う中、必死に技術を盗みバイクづくりに打ち込んだ。

「常連のお客さんからは、仲間も知り合いもいない宮城で頑張ってる私に、常連のお客さん達から頑張れよと励ましの言葉を頂いたり温かく見守って頂きました。」

9年間のうち、その店で1年以上続け、独立まで果たしたのは井上さんだけ。井上さんは「バイクを見る」ことだけを最優先し、叱られてもそれを自分の糧に変えた。

震災を経験し、生死を目の当たりにしたことで、「今を生き、勝負する」という覚悟を決めたのだという。

友人との約束「アメリカで勝負しよう」

井上さんは、アメリカで行われるハーレーダビッドソンのカスタムコンテスト『EASY RIDERS BIKE SHOW TOUR』で、日本人で初めての全米チャンピオンとなった。しかし、ここに至るまでは、数々のドラマがある。

井上さんには、20歳の頃から付き合いのある友人との約束があった。友人のバイクをカスタムし「アメリカで勝負しよう」というものだ。

「神戸のカスタムコンテストに出場したところ、チャンピオンになりました。それは、一見さんのバイクだったんですけどね。日本の大会では、友人のバイクをカスタムし優勝しました。それで、次は世界だ!と友人のバイクを船に積み、アメリカに渡りました」

井上さんはアメリカで開催される数あるハーレーのカスタムコンテストの中でも、最高峰である『EASY RIDERS BIKE SHOW TOUR』に挑んだ。それまで多くの日本人カスタムビルダーがアメリカに挑み挫折している。周囲からは「やめたほうがいい」「日本人では無理だ」と言われ続けた。しかし、井上さんは自分の力を信じて疑わなかった。

そして、2017年カリフォルニア州でのコンテストで優勝。さらにオハイオ州まで約3800kmの距離を自分で渡って本選に出場し、全米チャンピオンの称号を手に入れた。これはアジア人初の快挙である。井上さんは友人との約束を果たしたのだ。

「実は、その友人は自分が渡米する頃、ステージ4のがんを抱えていました。余命わずかだったんです。後に、『病気を明かせば井上はアメリカへ行かない』と思い、私には黙っていたと聞きました。日本に戻ったら、優勝したバイクで一緒に走るはずだったんですよ」

しかし、その前に友人は倒れ、2ヶ月後にこの世を去りました。

「彼が病気を隠してまで送り出してくれたからこそ、全米チャンピオンになれたんです。帰国後、一緒に走るはずだったのですが叶わず、悔しくてたまらない。彼は最後まで、私の背中を押し続けてくれました。あのバイクを見るたび、思い出しますね」

その友人のバイクは今も店に残り、2人が紡いだ年月と果たせなかった約束を静かに語り続けている。

「あなたでなければ」と言われる唯一無二の価値

井上さんの手がけるカスタムバイクは、何より「ハンドメイド」にこだわっている。一部機械加工する部分もあるが、最後の仕上げは、彼の手でしか生み出せない独特の造形美によって完成される。ハーレーの部品には廃盤がない。しかし、強度が足りない場合は作り直すこともあるという。

「『あなたのカスタムするハーレーがいい』とオーダーされることも多いんですよ。すべてを任されるプレッシャーはありますが、『あなたでなければ』というお客様の言葉や『リボルトのバイクはわかる』と言われるのが何よりうれしいですね」

井上さんは、グラインダーや工作機械を用いて鉄を削り、頭でイメージした複雑なフォルムを再現できる。ミリ単位の精度を手作業で出せるのは、数えきれないほど鉄と向き合い、磨いてきた経験があるからだ。時代によって異なる排気音やエンジンの造形、フィーリングを独自のアイデアと現在の技術で唯一無二の一台へと仕上げていく。

「お客さんたちは仕事で肩書きや立場があっても、ハーレーにまたがれば普通の人なんですよね。社長も会長も、一人のハーレーファンとして楽しそうにしているのを見るのが好きなんです。また、ハーレーは、自分が持っている1台を大切にする人が本当に多いですね」

アメリカへの再挑戦と次世代への継承

井上さんは「挑戦がなければ満足できない」と言い切る。日本人初の「EASY RIDERS BIKE SHOW TOUR」全米チャンピオンとなった井上さんは雑誌やテレビなどのメディアに露出するようになった。

「宮城時代のお客さんは「どっちが本当のおまえなん?」と茶化すんですよね。修行時代は自分を殺して生き抜くのが最善だと思っていたので、当時は余計な言動を避けていたんです。今は素直に笑って話せる。そんな自分になれたのも、長い修業時代を踏み越えたからこそだと思います。そして、今は若い世代に自分の技術を承継したいですね。熱意があれば誰でも歓迎です。弟子が育ち、その子のバイクを見た人から『これ、リボルトで習ったんじゃない?』と言われるようになったら最高ですね」

井上さんは、そんな未来を思い描きながら、日々ハーレーに向き合っている。お客様と密にコミュニケーションし、その思いを形にする高度な技術力が強み。REVOLT CUSTOM CYCLES(リボルトカスタムサイクルズ)なら、想像を超えるハーレーに出会えそうだ。

INFORMATION

REVOLT CUSTOM CYCLES

ハーレーダビッドソンのカスタム、修理、中古車販売、車検などを業務としております。
チョッパー、ボバー、ライトカスタムなどジャンルを問わず対応しております。製作の際にはオーナー様と綿密な打ち合わせを行い、必要に応じてワンオフパーツを製作しております。

創立
2013
ホームページ
https://www.revolt-cc.com/
Writer:
GOOD JOB STORY 編集部

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